マザー

  子供の頃によくあなたが僕に言ってた
大きくなっていつかダイアモンドの指輪をママに買ってねと
かじかむ僕の手をいつも包み込んでいた
傷だらけのその手に とても似合う筈などないのに

思い出だけが美しいまま年老いていくことが
人としての運命でしょうか

夜更けに街を独り歩いていた時のことです
昼間の人波がまるで嘘のように それは静かでした

沢山の眼が僕を見るけど
全てに目を背けずに生きていけたら
それだけでいい

生きることも死ぬことも年をとることも
いまの僕は怖くて仕方ないのです

人を信じて 時に欺いて
そんな時に浮かぶのは
あの日のままのあなたの顔

思い出だけが美しいまま年老いていくことが
人としての運命なのでしょう

ただそれだけのこと


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